最終更新日:2001.8.15

画像電子学会 論文・資料アブストラクト
第30巻 第4号(2001年 7月)





濃淡画像からペン画調画像への変換法 -線描,点描-

中川大介(岩手大学工学部)
山口恵介((株)メイテック)
藤本忠博(岩手大学工学部)
村岡一信(岩手大学工学部)
千葉則茂(岩手大学工学部)

近年,コンピュータグラフィックスにおいて非写実的なレンダリング法の研究が盛んに行われている.本論文では,挿し絵やテクニカルイラストレーションなどに用いられているペン画を取り上げ,与えられた濃淡画像からペン画調画像を生成する手法について提案する.ペン画の基本的な技法には,線で表す線描法と,点の集まりで表す点描法がある.線や点のサイズが表示デバイスの解像度に依存していると,低解像度のデバイス(モニタなど)では線や点が連結して模様が認識されるアーティファクトの発生がさけられない.本手法では線描の画像生成に1/fノイズによる揺らぎを与えた平滑化直線と呼ぶ濃度分布を持つ直線を用い,点描の画像生成に平滑化点と呼ぶ濃度分布を持つ点を用いることでアーティファクトの発生を低減させることができる.


グラフィックスハードウェアの利用による光の多重散乱を考慮した雲の高速レンダリング

土橋宜典(北海道大学大学院工学研究科)
西本暢生(広島大学大学院工学研究科)
金田和文(広島大学工学部)
山下英生(広島大学工学部)

近年、コンピュータ・グラフィックスを用いて、雲や炎、波などの自然現象を表示する試みが多く行われている。本論文では、雲の画像を高速に生成する手法を提案する。雲はアルベドの高い粒子から構成されており、多重散乱光成分の影響が大きいということが知られている。提案手法では、雲の密度分布はメタボールの集合により表現する。メタボールはその内部に濃度分布を割り付けた球であり、メタボール間での光の授受を計算することで多重散乱を考慮した雲のレンダリングを行う。このとき、標準グラフィックスAPI の一つであるOpenGLを用いて画像生成を行い、メタボールを階層的にグループ化することで、計算時間の短縮とメモリの大幅な削減を実現する。提案手法を屋外景観画像に適用しその有用性を示す。


ボリュームレンダリングを利用したイメージベーストレンダリングの試み

山本直志(東京工業大学大学院情報理工学研究科)
奥富正敏(東京工業大学大学院情報理工学研究科)

本論文では,イメージベーストレンダリングの新しい試みを示す. この分野では複数視点画像を用いた形状復元を行う方法が多く研究されてきたが,オブジェクトの全ての表面位置を陽に決定するという複雑で困難な作業を避けることができない.本論文で提案する手法では,イメージベーストレンダリングが仮想視点へ入射する光線の色を再現する問題であるという考察に基づいて,対象とする空間をボクセルに分割し,各々のボクセルを入力画像へ投影した際の色の違いによって微小領域での物体の存在の可能性を連続的に表現し,ボリュームレンダリングの手法を用いて直接レンダリングを行う.これによって対象の奥行き方向への不定性を残したまま,非常にシンプルなアルゴリズムで仮想視点画像が生成できることを示す.


重要度マップと流線照明モデルに基づく選択的3次元LIC ボリュームレンダリング

鈴木靖子(お茶の水女子大学大学院人間文化研究科)
藤代一成(お茶の水女子大学大学院人間文化研究科/財団法人高度情報科学技術研究機構)
陳  莉(財団法人高度情報科学技術研究機構) 

密な流れ場の可視化を可能にした流線畳み込み法(Line Integral Convolution:LIC)は シンプルな手続きにもかかわらず,流れの精緻な構造や大域的な特徴を直感的かつ効果的に 可視化できるため,現在,流れの可視化の代表的な方法になりつつある。この方法の拡張における 重要な方向性の一つに3次元化が挙げられる。これまで,いくつかの手法が提案されたが,3次元 のボリュームに対し,流れの方向に沿ってLIC計算を行った後に視線方向にボリュームレンダリングを 行うアプローチは,相関テクスチャを相殺してしまうため効果的でないとされてきた。本論文では, 流体位相解析から導出される重要度マップと3次元流線にハイライト効果を与える照明モデルを用いて 選択的にLICソリッドテクスチャをボリュームレンダリングする手法を提案する。


階層化位相シフト法による高性能レンジファインダの実現

塚本 壮輔(山口大学大学院理工学研究科)
古賀 和利(山口大学教育学部)
三池 秀敏(山口大学工学部)

本論文は,先に提案した階層化位相シフト法による奥行計測手法について,従来法との 比較および定量的な精度評価を行っている。この手法は対象に投影するパターンについて 1)1周期の正弦波を基本とすることで位相接続問題を回避し,2)空間周波数を階層的に 高いものへと切替えることで精度を向上させる。本論文では,階層を追うごとに高くする 投影パターンの空間周波数の幅が画像から算出する位相に含まれる誤差によって決定されると 考えている。そしてこの誤差のいくつかの場合について計測実験を行い,使用画像枚数および 計測精度との関係について議論している。また,従来法との比較として,パターン投影機に プロジェクタを用いた同一の実験環境において,提案手法と空間コード化法とによる計測実験を 行っている。その結果,提案手法は従来法と比較してより滑らかな(約3倍)奥行分布が 得られた。更に,測定環境の条件次第でより少ない画像枚数でも計画が可能なことを示した。


正面画像サンプルにおける表情差分を用いた任意表情の顔の3次元構造の生成

磯野勝宣(インテック・ウェブ・アンド・ゲノム・インフォマティクス(株))
赤松茂(法政大学/ATR)

自然なヒューマンインタフェースの実現に向けて,コンピュータグラフィック スによる顔表情の合成に関する研究が活発に行われている.本論文では,ある 表情(初期表情)の3次元構造と2枚の無校正画像を入力として,表情サンプル データベースから得られる表情変化に関する知識を用いて,任意表情の3次元 構造の復元を行う.入力データから,初期表情の3次元構造を2枚の入力画像に 投影する2つのカメラ射影行列が得られる.一方,初期表情から任意表情への 表情変化は,初期表情と任意表情の対応する特徴点の座標の差分として捉え, 差分を表情サンプルデータベースを用いて抽出し,得られた表情差分と特徴点 の不変性,顔の対称性,画像間の幾何学的拘束条件を用いて,2枚の入力画像 に対応する,任意表情の画像を生成する.2つのカメラ射影行列と,それに対 応する2枚の任意表情の顔画像が得られれば,任意表情3次元構造を復元するこ とができる.復元実験の結果,人間の視覚にとって自然な表情3次元構造を得 ることができた.


フラクタル符号化顔画像を用いた個人識別の試み

寺田賢治(徳島大学工学部)
山戸一宏(徳島大学工学部)
大恵俊一郎(徳島大学工学部)
大橋剛介(静岡大学工学部)

これまでに顔画像による個人識別に関する研究は盛んに行われているが,いずれの 手法も顔の向きや大きさ,照明条件などの画像取得時の変動に影響を受けやすかった。 一方,画像圧縮の一つとしてフラクタル符号化という圧縮技術がある。これは画像内 の各部分の自己相似性に着目した圧縮形式であり,JPEGなどとは異なり形に着目した 圧縮方式である。そこで,本報告では画像のフラクタル符号化の圧縮原理を用いた顔の 自動識別法を提案する。これは,フラクタル符号化の図形の形そのものに着目する圧縮形式の 原理を利用して,画像取得時の変動に影響を受けにくいような顔の識別を行おうとする試み である。本方式での顔の識別のための特徴量として,フラクタル符号化処理のうちの相似領域の 場所の分布を用いる。更に本報告では,本方式の有効性を確認するために行った識別実験の結果を示す。


3次元顔画像を用いた特徴点抽出と個人認識

小高一慶(早稲田大学大学院理工学研究科)
青木義満(早稲田大学理工学部)
橋本周司(早稲田大学理工学部)    

本論文では、3次元スキャナーから取得した顔の3次元形状データを用いて形状特徴点を抽出し、それを用いて3次元顔画像に対する個人認識を行う手法を提案する。形状特徴点は、3次元曲率、ポリゴン密度、特徴稜線といった形状の特徴を表す複数のパラメータと、顔のテクスチャー情報とを統合することによって求める。また、抽出した特徴点群に自動的に面を張ってばねモデルを生成し、それを伸縮させてデータベースに登録してある顔モデルと弾性的にフィッティングし、相関度を算出することで個人認識を行う。実際に認識実験を行い、本手法の有効性を示す。


簡便に利用できる顔モデル作成システムを用いた仮想空間での出会いにおける3次元人物表示の効果

箕浦大祐(日本電信電話㈱NTTサイバースペース研究所) 
石橋聡(日本電信電話㈱NTTサイバースペース研究所)    
長谷雅彦(日本電信電話㈱NTTサイバースペース研究所) 

筆者らは,3次元コミュニケーション仮想空間において3次元的に人物の顔を表示するための簡便に利用できる顔モデル作成システムを開発した.このシステムは,利用者が家庭やオフィスから一般的なPCを用いてコミュニケーション仮想空間に参加する利用状況を想定して,入力画像の背景条件や顔面の明るさにロバストな画像処理方法を実現した.このシステムを用いて作成される3次元人物顔による3次元仮想空間での人物表示を,従来の平面的な利用者の顔による3次元仮想空間での人物表示や現実空間での対面と比較実験を行った.実験では,集団からコミュニケーション相手を発見する「出会い」の過程における顔の表示方法の影響を比較した.分析の結果,相手を発見した時の距離,角度,および発見に要した時間とも,現実空間の対面に近づく効果が見られた.この結果を元に,コミュニケーション仮想空間で本顔モデル作成システムを利用する上の課題を考察した.


局所領域法によるディジタルカラー漫画への電子透かし

小堀紀子(防衛大学校情報工学科) 
岩切宗利(防衛大学校情報工学科)
松井甲子雄(防衛大学校情報工学科)

インターネット環境の整備とパソコンや携帯端末等の普及に伴い,ディジタル形式による文書や4コマ漫画等のオンライン配信が可能になった.一方,ディジタルコンテンツの供給が増えるにつれて不正コピーや改ざんなどの著作権侵害の問題が指摘されている.しかし,現状でのディジタル著作物の著作権保護対策は十分とはいえない.そこで本論文では,ディジタルカラー漫画に注目し,各コマ毎に著作権情報を埋め込む電子透かし法を提案する.カラー漫画の中の文字や絵を構成する画素の集合について同じ性質をもつ局所領域を面としてとらえ,その平面的な広がりを透かし情報により制御する方法である.まず,画像内の色ベクトルを調べ,埋め込み対象となる局所領域を求める.次に,この領域の法pのもとでの画素数と透かしビットの値によって局所領域を拡張するか否かを制御する.この方法によれば,透かしを埋め込んだ局所領域が一様に拡大もしくは縮小するため,視覚的な画像の乱れを少なくし,良好な画質を得られる利点がある.


Audio-Visual Tracking System for Multi-Modal Interface

Dmitry Zotkin(University of Meryland/ATR)
Kazuhiko Takahashi(Yamaguchi University/ATR)
Tatsuo Yotsukura(Seikei University/ATR)
Shigeo Morishima(Seikei University/ATR)
Nobuji Tetsutani(ATR)

In this paper, a front end system which uses audio and video information to track the people or other sound sources in the ordinary room has developed. The microphone array is used for determining the spatial location of the sound; the active video camera acquires the image of the area where the sound is detected, detects the people in the image by using skin color and can zoom and track a speaker. Several add-ons to the system include various visualization tools such as on-screen displays of waveforms, correlation plots, spectrum plots, spatial acoustic energy distribution, running time-frequency acoustic energy plots, and the possibility of real-time beamforming with real-time output to the headphones. The system can be used as a front-end for the non-encumbering human-computer interaction by video and audio means.



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